第6回 朝起きはすべての基本

おやさまは飯降伊蔵(いぶりいぞう)様に、「朝起き、正直、働き」の三つを「しっかり握って、失わんようにせにゃいかんで」と、お教えくださいました。

伊蔵様は、この教えを生涯守って通り、おやさまの後を受けて、親神様(おやがみさま)の思召(おぼしめし)をお伝えくだされ、「おさづけ」の理をお渡しくださるようになりました。(『稿本天理教教祖伝逸話篇』 29 三つの宝)

まず「朝起き」というと、朝起きるのは当たり前ではないか、と言われるかもしれませんが、「おさしづ」に、

何を神が頼むと言うなら、順序朝々事情という、何でも彼でも日の差し出に運んでくれにゃならん。

明治39年12月6日

とお教えくださるように、お日様がお昇りになるまでには、ちゃんと起きて神様を拝み、すがすがしく日の出を拝ましてもらう、というのが、本当の朝起きだと思います。

さらに、

一日の理は朝にある。

明治22年5月7日

と仰せられるように、その日がどういう一日になるかは、ほとんど朝に決まると言ってもいいほど、朝は大切です。

お日様よりも早起きして、朝づとめの前に掃除などの「ひのきしん」を少しでもさせてもらう。
これが実行できた日は、一日中すっきりとした気分で、何をやってもはかどるし、とても充実するものです。

さらに、伊蔵様の娘のよしゑさんには、この教えについて、詳しくお説き分けくだされています。

朝、起こされるのと、人を起こすのとでは、大きく徳、不徳に分かれるで。

『稿本天理教教祖伝逸話篇』 111 朝、起こされるのと

やはり、人から起こされるまで寝ている、というのは、人に起こすという負担、心配を掛けるわけですし、自分もすっきり起きられるタイミングで起こされるとは限りませんから、目覚めもすっきりしませんね。

それよりも、自分がすっきり起きられる自然に目の覚めたタイミングで自分から起きる方が、自分も気持ちいいし、人も喜んでくれるし、その姿を見て親神様もお喜びくださるのです。

そんなふうに朝すっきり目覚めるためには、いくら遅くても12時過ぎまで起きていてはいけません。
できれば夜10時までに寝るのが理想です。
夜の10時から夜中の2時までは、最も睡眠に適した眠りのゴールデンタイムで、この時間帯にしっかり睡眠を取るのが一番身体のために良いのです。
そして、朝は多少早く目が覚めても、目の覚めたときにサッと起きる。

このコツとして、ある人は、「目が覚めたらその瞬間、サッと起きる。床を蹴って、サッと起き上がる。それから時計を見る。人の目というものは必要な時に覚めるものだ。それで起きようとすればいつでも起きられるものだ、時計よりか人の目の方が正確だ」と言っています。

実際、人間の眠りには約90分を周期とするサイクルがあって、気持ちよく起きられるタイミングで自然に目が覚めるようになっているのです。

多少予定より早く目が覚めてしまっても、布団の中でぐずぐずしているよりも、サッと起きて、周りの迷惑にならないように、何かやりたい事、やらなければならない事をした方が、ずっと気持ちよく一日のスタートを切れます。
小さなプラスアルファでも積み重なれば大きなものとなります。

もくじ

思い立ったら即動く

いずれにせよ、この目が覚めたときにサッと起きる、というのが大事なところで、朝起きに限らず、何でも思い立ったときにサッとやってしまう、というのが大切なことだな、と私は数々の失敗を通して痛感しています。

「ふと浮かぶは神ごころ、後から曇らせて消してしまうのは人間心」という先人の言葉がありますが、せっかく神様が思い浮かばせてくださったのに、それを実行せずに無にしていては、しまいには神様もあきらめて、大事なことも思い浮かばせていただけなくなってしまうのではないでしょうか。

私の父は、おたすけは聞いたらすぐに駆け付ける、ということを信条にしていましたが、心に浮かんだことはおろそかに放っておいてはいけないと思うのです。

私が本部の青年にしていただいたころ、後輩に、一人の悩める青年が居ました。
私は彼のことが気になって、たびたび訪ねていたのですが、そうして3年ほど経ったある日、彼が「私は、恩を感じている。
何より、私が本当に会いたいと心から願った時、必ず来てくれたことが一番うれしかった」と言うのです。

それを聞いて私は不思議な感じがしました。
実は、私は教祖殿に参拝して、彼のことが心に浮かんだら必ず訪ねることにしていたのです。
ああ、あれはおやさまがお導きくださっていたのに違いない。

そうして、私は少しでも彼の力になりたいと思って、通っていたのですが、実際のところ、私が彼のためにどれだけ役に立てたのかは分かりません。
しかし、これだけは確かに言えます。
彼の所に通うことによって私自身がたすけられていたのです。

当時の私は、本部の青年として入れていただいたばかりで、右も左も分からないような時代でした。
その中を何とか通り切れたのは、いろいろな出会いもありましたが、彼との出会いも大きかったのです。

要は、思い立ったら直ちに行動する、ということを自分に習慣づけるということが大切で、そのためには、朝起きをサッと実行する、というのが一番に大切なことだということです。

そうすれば、タイミングの徳が頂ける。
そんなふうに朝起きを実行していると、必要なときに必要な人に、必要な情報に巡り合えるようになる。
そして必要なときに必要なアイデアが浮かび、必要なことができるようになってくるのです。

どんな一日も、朝から始まるのですから。

つづく

※『Happist』2012年9月号掲載

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