平川寛行「病の元は心から」

もくじ

近所で喜んでもらおう

私には、9年前から始めたことがあります。それは、ある出来事がきっかけでした。

ある日、妻が日本に来たばかりの外国人の家族と知り合い、子どもの家庭教師を頼まれました。経験のない妻は断ろうとしましたが、母親の必死なお願いに、何とか少しでも協力したいという気持ちになり、単独布教中に間借りしていた長屋に呼んで教え始めました。

すると、教え方が良かったというより親切だったようで、すぐに評判となり、一人また一人と狭い場所に子どもたちが集まるようになりました。

私は「勉強ができるのも健康な身体があるからで、そのお礼と家族がこれからも仲良く幸せに暮らせるよう、夕づとめを勤めましょう」と伝えると、ふざけながらも子どもたちはおつとめを勤めてくれました。 親しくなった子どもたちは、私の子どもが習っている支部の鼓笛隊にも入り、「こどもおぢばがえり」ではパレードにも出演してくれました。

子どもたちの両親も、勉強を見てくれたり、鼓笛隊で子どもの世話をしてくれたり、これまで周りを見渡してもそのような人がいなかったと喜んでくれました。私たちにとっては日々ひのきしんを実践しているだけなのですが、そのひのきしんの行いが人が求める優しさだったのでしょう。

現代の日本の歪みに対して

現在、日本では結婚したカップルの3組に1組が離婚しています。そして、母子家庭になると、親や親戚が近所にいない場合、信用できる他人の共同保育の手助けが必要になります。そのような心に傷を負った人が自分の住む町にいれば、私は積極的に手助けをしたいと、この経験を通して強く思いました。

それ以降、私は「家庭教師が必要な方、音楽に興味がある方、鼓笛隊の見学をしてみませんか?」と、自分にできることを書いたチラシを配ってみました。

そして、興味を示してくれた方には、かわいい衣装を着た鼓笛隊のアルバムを見せたりもしました。すると、思いのほか反応が良く、短期間で20もの家族が鼓笛隊の見学に来てくれました。初対面の相手からの声掛けでも、必要だと思えることならば喜んでいただけるのだと実感しました。

私はそれをヒントに、お見合いの相談、草引き、買い物の運転手、家の掃除、悩み相談など、自分が手伝うことのできる事柄をチラシに書き足して、時間がある時ににをいがけだと思い、配って歩きました。その結果多くの方と知り合うことができました。

年配の方に一番人気があるひのきしんは、ご自宅で好きな料理を作り一緒に食べることです。核家族化が進み、誰も訪ねる人のない孤独感は、日本の高齢者の大きな病にも感じます。

この活動の中でよく高齢者の方々が「息子夫婦や孫から全然連絡がないんだ。小さい頃はかわいかったけれど、今は忙しいみたいで全然連絡がないんだ」と寂しそうに話します。私は家族以上に会うので、家族や親戚に私たちを「天理教さん」と紹介してくれるほど信頼関係ができました。

皆さんも、もし、おじいさんやおばあさんと離れて暮らしていたら、たまには電話をかけたり手紙を書いたりしてくださいね。定期的に会うことができればとても良いです。きっと孫の成長を毎日のように楽しみにしていると思います。

現在のひのきしん活動では地震による家具の転倒防止を補強したり、パソコンを教えてあげたり、相手が好きな将棋を差したりしています。相手が心から喜んでくださることを、損得なしで心からお付き合いしていけば、相手には真実に映ります。

大事なことは、相手が困っている背後にある心理を共に考えること。それが「寄り添う」ということだと思います。そして、依頼される方々のすべてに共通することは、心の孤独や寂しさです。昔、仕事をして元気だった頃を思い、過去に生きている人も数多くいます。

話を聞いてもらえるだけで、どれだけ気持ちが楽になるか分かりません。人って誰かとつながっていないと駄目なんですね。たとえ若い人にとっては分かりにくい昔の話でも、聞いてあげてください。その優しさを、きっと教祖(おやさま)はほほ笑んでご覧くださっていると思います。

今、勉強していることが「いつか必ず人のため世のためになる」と意識するのとしないのでは、大きく差が開きます。

そして、自分しかできないことを世界の多くの人が待っていると思って生きると「今」が楽しくなりますね。今を大切に多くのことを遊びながら笑いながら学んでほしいと思います。

1 2 3
この記事をみんなにシェア!
もくじ