纐纈卓也「英語嫌いだった僕が海外生活できたワケ」

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嫌い……いや、むしろ好き?

「英語なんて嫌いだ! 海外なんか一生行くもんか!」

be動詞すら理解できない中3の僕は本気でこう考えていた。そんな僕が変わったきっかけは、英語の先生のある一言だった。

「皆さんにお願いです。英語が苦手、それは別に良いんです。でも決して、『嫌い』にしないでください。『苦手』と『嫌い』とでは大きく意味が違ってきます。嫌いだと決めつけてしまうとそれまでですが、苦手なら克服できるかもしれないですから」

その言葉にハッとした。僕も嫌いを苦手に変えたら、分かるようになるかもしれない……。それまで開きたくもなかった問題集を、いったん嫌いという気持ちは脇に置き、中1の範囲から改めて丁寧に解き直してみた。すると、あれだけ理解不能だった英語が、まるでパズルのピースがはまるかのように不思議な程あっさり理解できた。それをきっかけに3年分の「?」は次々と解決していき、いつしか英語がちょっと面白くさえ感じていた。僕の嫌いが、苦手、いや、むしろ好きなのかも、に変わった瞬間だった。

「嫌い」を「苦手」に変えてみる

かしもの・かりものの理」という教えを聞いたことがあると思う。僕たちは親神様からこの体をお借りして日々暮らしている。体だけではない。親神様は、食べ物、着る物、水や空気、住む国や地域、人間関係など、当たり前にあるありとあらゆるものをお与えてくださっている。そのおかげで、私たちは陽気ぐらしを目指すことができる。だから、身の回りの物事すべてに対して感謝の心を持つことが大切だと思う。

しかし、それは簡単なことではない。だからあの時「嫌い」を「苦手」に置き換えたように、少しずつ、意識的に「当たり前」を「ありがたい」に置き換えて考えるようにすること。最初の一歩はそれぐらいでもいいと思う。その一歩が、道を思わぬ方向へ伸び広めてくれる。

さて「一生行くもんか!」と思っていた海外だが、英語が少し分かりかけると身勝手なもので行ってみたくなる。というわけであれから数年後、僕は青年会本部の海外派遣事業に応募し、フランスで3年半、天理教のご用をさせてもらうことになった。さらに、今はその経験をもとに、日本へ移住して来られた外国籍の方々に、日本語を教えるボランティアを日々楽しみながらさせていただいている。

もしあの時、英語が嫌いなままだったとしたら、今の僕はいないはずだ。嫌いという心の向きを、まずは苦手にほんの少し変えてみたこと。それが「英語嫌いだった僕が海外生活できたワケ」である。

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