毎晩のおさづけとマッサージ
私が大学生の頃、一緒に住んでいた祖父母は病気に加え足腰も悪く、寝たきりの状態でした。
おじいちゃん・おばあちゃん子だった私は、つらそうな祖父母に何かしてあげたいという思いから、毎晩おさづけの取り次ぎと、30分のマッサージをすることを決めました。
しかし、大学生といえば遊び盛りです。毎晩と決めたものの、面倒になってしまったり、外に出かけてしまおうと考えたりすることもたびたびありました。
ですが、そんな気持ちをグッとこらえて祖父母の元に足を運んだ時は、こちらの気持ちなど知らないはずなのに、「陽ちゃんがこうして毎日心を掛けてくれるから、生きていられるよ、本当にありがとう」と涙を流して喜んでくれるのです。
大切なことを忘れて、自分の気持ちに流されそうな自分を恥じました。
ご用を一生懸命勤める姿
私は大学を卒業後、天理教校本科実践課程に入学することが決まっていましたが、なかなかそのことを祖父母に伝えられずにいました。
あんなに喜んでくれた、涙を流すほど必要としてくれていた時間が、全く無くなってしまう。身体も弱ってきているから、離れ離れになったら二度と会えなくなってしまうかもしれない……。そんな状況で家を出ることを、きっと悲しむに決まっている。そんな風に思ったからです。
しかし、いよいよ旅立ちの日が近づいてきて、勇気を出しておぢばの学校へ行くことを伝えました。その時に祖父母が伝えてくれた言葉は、私にとって信仰の原点ともなり得るものでした。
「胸を張って行ってきなさい。確かにおさづけやマッサージもうれしかったけれど、おじいちゃん、おばあちゃんが一番うれしいことは、陽ちゃんが神様のご用を一生懸命勤めることだからね。だから私たちのことは何も心配しないでいってらっしゃい」
本当は寂しかったのかもしれないし、引き止めたかったのかもしれません。けれど、そうやって送り出してくれた祖父母のおかげで今の自分があると思えるのです。
結局、二人の出直しに立ち会うことはかないませんでしたが、お道の教えを伝えるために、にをいがけに歩くこと、感謝の心でひのきしんを行うこと、そして陽気ぐらしに向かって日々通ることが、今でもできる最大の親孝行なのだと信じて、この道を歩ませていただいています。
「親への孝行は月日への孝行と受け取る」と聞かせていただきます。また、神様のご用を一生懸命勤める姿が親にも喜んでもらえることにつながるのではないかと思います。
親孝行の大切さ、そして「神様への孝行」の大切さを教えてくれた、おじいちゃん、おばあちゃん。本当にありがとう。