高部善太「心のこもった言葉」

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温かいご飯と温かい言葉

今年の2月、地震の被害にあった石川県に炊き出しひのきしんに行きました。行かせてもらったのは、志賀しかまちという所の福祉センターで、そこにはお年寄りの方から若い方まで40人ほどおられました。

現地に到着して提供を始めると、施設の方だけに限らず、周辺地域の方も来られて、大量に作っていた親子丼とかす汁はあっという間に完売しました。現地の方には「本当に来てくれてありがとう」とお礼をたくさん言われて、来てよかったなーと感じました。

そんな中、特に印象に残ったのは、あるおばあさんの「ありがとう」の言葉です。そのおばあさんは腰がすごく曲がっていて、見るからに歩くのが大変そうで、お世辞にも元気そうとは言えませんでした。それでも自ら食事を取りに来て、宿泊する部屋に戻っていかれました。

30分ほどして、そのおばあさんが福祉センターから出て来られる姿を見かけました。急いでおばあさんのところに行くと、食事を渡す際にこちらが渡していたお盆を持ってきてくれていました。

お盆は返さなくていいと伝えていたので、改めてそのことをお伝えすると、おばあさんは「お盆はついでに持ってきただけだよ。それよりもお礼がどうしても言いたかったんだよ。温かいご飯を作ってくれて本当にありがとう。本当においしかったよ」と、僕の手を優しく握りながら言ってくださいました。特別なことを言われたわけではありませんが、その言葉は今でも僕の心に残っています。

しっかりと心を込めて

この出来事をきっかけに普段の生活を改めて考えることができました。日々の生活の中で感謝を伝えることは多いけれど、ただ言葉を交わしているだけ、行動しているだけのことが多いと感じます。

ご飯が食べられること、妻がそばにいてくれること、子どもたちが元気でいること。これらすべてが当たり前になっていたと気付かされました。日常で顔を合わせる身近な人たちにこそ、感謝の言葉や行いにしっかりと心を込めていきたいと思います。

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