児玉一也「絶体絶命のピンチ」

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恐怖のストリートファイト

僕は大学2年生の夏、1ヶ月間カナダでホームステイをしていた。そこで生まれて初めて、絶体絶命だと感じる出来事を体験した。

カナダでの生活が始まって1週間ほど経った週末の夜、僕はホストファミリーの息子さんにバーに連れて行ってもらった。彼は「大男」という言葉が相応しい人だった。体つきだけなら大谷翔平以上で、腕は僕の太もも以上に太い。

バーに着いて、楽しく時間を過ごしていたが、1時間ほど経った時「ストリートファイト」という単語が耳に入ってきた。突然息子さんが席を立ち、真っすぐ歩き始め、向かう先には、彼とほぼ同じ体型の男の人がいる。息子さんの強烈な左パンチによって、突然ストリートファイトが始まった。

店内は大騒ぎで、いつの間にか2人は店の外にいた。僕は全く状況が理解できず、その場から動けなくなった。映画でしか見たことのないような、格闘風景が目の前に広がっていたが、やがて、収集がつかなくなり息子さんと僕は無理やり家に帰らされた。

車を運転する息子さんの顔や腕からは出血しているし、車のスピードは明らかに法定速度を超えている。そして、途中で止められたことが気に入らなかったのか、彼は興奮が抑えられない様子だった。赤信号になるとハンドルをバンバン叩いて、多分テレビだと放送できないであろう言葉を連発している。家に着くまでの約30分間、彼は興奮しては落ち着き、また興奮するということをずっと繰り返していた。

興奮を抑えられない息子さんの怒りの矛先が僕に向いて、何をされるか分からなかった。僕は生まれて初めて命の危険を感じた。

何とか無事に家に着いて部屋に戻ることはできたものの、僕は感じたことのない恐怖で1人うずくまっていた。

いざという時に

どれぐらいの時間が経ったか分からないが、突然「おつとめをしよう」と思った。僕がカナダで恐怖のどん底にいる時に唯一頼ることができたのは「親神様」だった。

部屋でおつとめを勤めると不思議にも心が落ち着いた。僕は初めて心の底から親神様にすがることができ、どこにいても見守っていてくださるのだと実感した。

日常では親神様を心から感じることは少ないかもしれない。しかも、親神様を感じて、信仰のありがたさに気付けるのは絶体絶命のピンチになった時かもしれない。

しかしだからこそ、普段から神殿へ足を運び、おつとめを勤めて親神様に心をつなぎ、いざという時にお働きいただける道を作っておくことが大切ではないでしょうか?

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