人は30代後半ぐらいから、突然今までのファッションが似合わなくなるという話がある。
しかし自分自身は、28歳の時のイメージのままで鏡に立ってしまうらしく、似合わなくなった服装に気付かない人が多いという。それが、おしゃれにも更年期があるという意味である。
では、年を重ねた自分の姿を見る方法は?
答えは「何気ない自分の後ろ姿を写真に撮ってもらって見ること」だそうだ。
人の何気ない後ろ姿、つまりそれが本来の自分の姿だということだ。先日、私はまさにこの自分の後ろ姿にビックリさせられた。
私の背中
そう大柄ではない私は普段「Mサイズ」の服を着てきたが、最近すくすく育ち「Lサイズ」に変わった。そこで、I love ○ニクロへ。
ラッキーなことに格安コーナーで1枚390円のTシャツをゲットした。家に帰って着てみると想像以上に良い。そこで、これならもう1枚買おうと思い、明くる日再び、I love ○ニクロへ。
出先で昨日とは別の店だったので、買ったばかりのTシャツを着て行き、店員さんに「これが欲しい」と説明した。するとすぐに格安コーナーまで案内してくれた。
その店員さんが、ちょっとかわいかったので、私は満面の笑みで「ありがとう」と伝えたのだが、なんとその店員さん、いきなり背後から私の背中を触ってきたのである。
びっくりして振り向くと、一言。
「これ剥がしますね~」と背中に付いていた何かを剥がしはじめた。
「L」と書かれたシールだった。
しかも「LLLLL……」と、必要以上にいくつも「L」が書かれたとても長いシールではないか。
私はこのTシャツを着て、鏡の前では完璧のつもりだった。しかし、まさか背中にシールが貼られていたなんて。久しぶりに「穴」を探した。
なるほど、自分のことは分かっているようで、本来の姿は見えていない。確かにその通りだと思った。
あなたの背中は?
よく「子どもは親の背中を見て育つ」といわれる。では私たちは今、どんな背中を見せているのだろうか? 余計なものを付けた背中を見せてはいないだろうか?
我(が)だとか、プライドだとか、欲だとか……
表は、ちゃんとおめかしができるし、女性なら化粧などで見られたくないところもきれいに隠せる。だから美しく見せられているはず。しかし、実は背中には、我だとか、プライドだとか、欲など、まさに「LLLLL……」のような余計なものを貼って歩いているのかもしれない。
ではどうすれば、後ろ姿をきれいにできるのだろうか?
それはやはり、人に教えてもらうしかないのである。後ろ姿は自分では見えない。だから人に指摘してもらって初めて気付くのだ。
人から指摘されることはあまりいい気分ではないけれど、でもそれはまさに「あなた背中にシール付いてますよ」と、自分では見えていなかった余計なものに気付かせてくれる、大切な言葉なのかもしれない。
教祖(おやさま)は、
人が悪口を言うたら、その人の後姿を拝んで通るんやで、そうしたら、その人がこちらの因縁(いんねん)を取って下さる恩人になるのやで
高野友治『教祖余話』50ページ
と仰られたと伝えられる。
人の背中を拝み、人に背中を拝まれるような、そんな人になりたいなぁ。
よし、まずは似合わなくなった服にさよならしよう。