山下 龍一朗「苦労を味わう」

もくじ

経験するから味わえるもの

テレビを見ていると、芸能人が人気のあるお店や評判のいいお店でグルメロケをしている番組をよく見ます。イチ押しのメニューを食べて、味の感想を分かりやすく視聴者に伝えてくれます。

コメントを聞いていると、その料理を食べてみたくなるのは私だけではないと思います。

しかし、いくらどれだけ想像力が豊かでも味は全く分かりません。味が分かるのは実際に食べたことがある人だけです。その味を確かめようと思ったらお店に行って自分の舌で感じるしかないのです。

人間は生きていると、さまざまなふしに直面することがあります。神様のお言葉に「ずつない事はふし・・」とあるように、それは時として自分にとって都合の悪い、つらい出来事だったりします。

苦労の末に得た財産

私も高校時代にふし・・を頂戴しました。おぢばの学校に通い、寮生活をしていたのですが、ある日突然、無気力になって何に対してもやる気が起きなくなったのです。寮にいることがつらく、一時的に帰省することになりました。

その当時はとてもつらく「何で自分がこんな目に…」と落ち込みました。しかし、親や寮の幹事さん、同級生からたくさんの励ましの言葉をもらいました。その中でも、母がくれた言葉が印象に残っています。

「元初まりのお話の中で、産みおろされた子どもが成人しては出直し、また生まれ変わるやろ。そして、九十九年経ったら少し成人してまた出直すやろ。人生はこれの繰り返しやと思うんや。
今はゆっくり休んで、このふしを通して前よりちょっとでも成人できたらええな」

今のつらい時間は成長するための準備期間なんだと気付き、この言葉に本当に救われました。そして、次第に前を向けるようになり、寮に戻ることができました。このふし・・を通して気付いたことがあります。

それは苦労をした人ほど人の痛みや悲しみが分かるようになるということです。無気力になったことがあるからこそ、前を向けなくて悩んでいる人の気持ちが分かるように、つらい経験はいつか同じような悩みを持った人に寄り添うことができるための財産になります。

自分が苦労を味わったことで、相手が同じような苦労を抱えていたら、そのつらさが分かるようになるのだと思います。

おふでさきに

にち/\によふほくにてわていりする
どこがあしきとさらにをもうな

『おふでさき』3号 131

とあります。

自分にとって大変だと思うふし・・は親神様からの「将来、味わった苦労を台として人だすけをしてほしい」という切なる親心なのだと思います。

教祖百四十年祭まで残りわずか、少しでも教祖にお喜びいただけるよう、ご安心いただけるよう、日々を歩ませていただきたいと思います。

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