田邊幹善「頼まれやすい人に」

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頼まれやすい人に

「就職おめでとう! いよいよ社会人ですね。会長さんなりに頑張って選びました。長く使ってもらえたら嬉しいです」

春、教会につながる若い人が就職を果たすと、私は必ずちょっとしたプレゼントに手紙を添えて渡す。本当はお金が一番喜ばれるのかもしれないが、お金はいつの間にか無くなって何に使ったのかも忘れてしまう。

時計、財布、かばん、名刺入れ……、その子が喜んでくれるようなもの、普段から身近に使えるようなものを苦心して選ぶ。

私が自分のためにはなかなか買えないような、ちょっといいものを背伸びして買う。「これは就職の時に会長さんにもらったもの」と、いつでも思い出させるようにする。いわゆる「恩に着せる作戦」である。素晴らしい会長さんだ。

さて、添える手紙には毎回必ず同じ内容を書く。人が幸せになっていくために、私が自信を持って思っていることの一つである。

以下、手紙の内容の抜粋である。

特に若いうちは、人から「もの」を頼まれやすい人になるように心掛けてほしいと思います。これは会長さんが実際に心掛けてきたことです。どうしたら頼まれやすい人になるか。それは自分で考えていろいろ実践してみてください。

では、「もの」を頼まれやすい人になるとどうなるか。まずは周りの人から可愛がってもらえます。そしてそれを続けていくうちに、その理が回って、今度は自分に立場が与わった時に、この人の言うことなら聞かせてもらおう、この人の頼みなら素直に受けさせてもらおう、と思ってもらえる徳を頂けるようになると思います。

でも、それだけじゃない。教祖(おやさま)は「人が好くから神も好くのやで」と仰いました。(『稿本天理教教祖伝逸話篇』 87「人が好くから」)
 
人から好かれる人は神様からも好かれるのです。同じように、人から頼まれやすい人、使ってもらいやすい人というのは、やはり神様からも頼まれやすい、使ってもらいやすい人になるんじゃないかと思います。

神様に使ってもらいやすい人というのは、無条件に明るく勇んだ毎日を送れる人です。逆に、人からこの人は「もの」を頼みにくい人だ、使いづらい人だと思われる人は、やはり神様からも頼まれにくい、ご用に使いづらい人になってしまいます。
 
神様のご用というのは「陽気ぐらし」に向かう「世界たすけ」のご用ですから、そのご用に使ってもらうことができないというのは、いつまでも自分中心で、最後には誰からも見放されて行き詰まる人生になってしまうと思います。

だから、会長さんは若い人には若いうちから、人に使ってもらいやすい、なんでも頼まれやすい人になるよう心掛けて通ってもらいたいと思っています。

春が来るたびに手紙をしたためながら「幾つになっても忘れちゃいけないな」と自分自身を省みる、成人の鈍い会長さんである。

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