息子の病気と向き合ったAさん
約3年前、教会につながるAさん宅の講社祭にうかがったときの話です。
何気なく「ご家族の方や親戚の方々、お変わりないですか?」と尋ねると、「会長さん、実は……」と、Aさんは涙ながらに話しだしました。
「息子が健康診断で引っかかり、どうやらがんが見つかったようで……病院で詳しく調べたら転移しているらしくて……」と、行き場のない胸の内を話してくれました。
Aさんは80代、息子さんは50代で、中学1年生のお孫さんもいます。まだまだ働き盛りで子育て中の息子家族の将来を思うと、涙が止まらず、毎日泣いて過ごしているとのことでした。
私は、まずはその胸の内をじっくりと聞かせていただいたあと、「毎日、教会の朝づとめに参拝しませんか? たすけていただくために、毎日、しっかり神様につながって、少しずつたすけていただく“種”をまくことから始めませんか?」と提案させていただきました。
実はAさん、それまでおぢばがえりをしたことも、おつとめをしたこともありませんでした。「家の宗教が天理教だから」と、講社祭のときに対応してくれる程度で、信仰に対してあまり積極的な態度ではありませんでした。
しかし、「息子さんの病気をたすけてもらいたい」という一心から、素直に私の提案を聞き入れ、教会の朝づとめに合わせて、日参(毎日教会へ参拝すること)をするようになったのです。
初めは右も左もわからず、参拝場にいる私の祖母の隣でただ座っているような状態でした。それでも朝づとめのあと、少しずつ神様のお話をお伝えしたり、息子さんの近況を聞いたりする日々が続きました。

小さな「真実の種」が引き寄せたご守護
そんなあるとき、Aさんはこう話してくださいました。
「教会に来ると涙が出て、どうしようもない不安な気持ちがなくなり、不思議と心が落ち着くんです。息子の病気も、必ず神様にたすけてもらえるという気持ちになって、勇気がわいてくるんです」
こうしてAさんは、少しずつ信仰に対して前向きになっていきました。
その後、入院や手術後の治療を経て、息子さんの病状は少しずつ快方に向かい、現在は仕事にも復帰され、見事にご守護をいただきました。
息子さんのがんという大きな節を乗り越えるために、Aさんが行ったことは、決して特別なことではありません。毎日毎日、ちょっとずつ、神様につながる「種まき」を続けられたのです。
教祖はあるとき、一粒の籾種を持って飯降伊蔵様に向かい、次のように仰せられました。
「人間は、これやで。一粒の真実の種を蒔いたら、一年経てば二百粒から三百粒になる。二年目には、何万という数になる。これを、一粒万倍と言うのやで。三年目には、大和一国に蒔く程になるで。」
(『稿本天理教教祖伝逸話編』30 一粒万倍 )
「素直に、毎日毎日、教えの実践を積み重ねること」―― その小さな一歩の積み重ねこそが、未来の大きな喜びにつながるのだと学ばせていただいた出来事です。

