平井直子「神様が下さった出愛(であい)」

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神様が下さった出愛(であい)

あの夏、7年ぶりに一目ぼれの彼と再会を果たした私。電話に出れば「もしもし? ありがとう」、小さなことにでも「いつもありがとう」、ちょっとしたつまずきがあっても「それってありがたいことやなぁ」、彼の口からついて出る言葉は、あふれんばかりの感謝の言葉。

こんなに「ありがとう」いっぱいの人と出会ったのは初めてかもしれない……。まるで、「ありがとうおばけ」みたい……。私の落ちきっていた心に、彼はありがとういっぱいのシャワーで光を与えてくれました。

「結構やなぁ、もったいないなぁ、ありがたいなぁ」そう話す彼は、本当に温かく喜びいっぱいの中で、真っすぐにお育ていただいたんだろうなと感じました。「こんな人の隣にいられて、一緒に神様のご用をさせていただけたら、これ以上の幸せはないだろうな」、私はそう思える出愛(であい)を神様から頂けたのです。

苦しかったあの夏の日。彼が私の心をたすけてくれました。本当に本当に感謝しかありません。神様が下さった一つの出会いが、大切な出逢(であ)いになり、そこに出愛が生まれました。

そうして、私はついに「ありがとうおばけ」君のお嫁さんになりました。

四つ目の命

あっという間に時は過ぎ去り、結婚して7年目のことです。私たち夫婦は四つ目の命を神様から授けていただきました。

楽しみばかりで病院へ向かいましたが、先生の口から出た言葉は「流産する可能性があります。流産を止める薬はありません。あとは赤ちゃんの生命力をお母さんが見守ってあげてください」とのこと。この先は、医学にできることはない。もうこれは神様の世界だなと思いました。

帰って主人にこのことを話すと「この先、成ってくることは、すべて神様にお任せしよう! とにかく、今の自分たちに与えていただいている毎日のご用を、しっかり心を込めてさせてもらおう!」と、主人は言いました。「今までの自分では甘えてできなかったこと」「どうしたらもっと親や周りの方々に喜んでいただけるかということ」。

こうして、少しでも自分の心と行いを変えていくことが、この先、成ってくることを受け止められる心を作っていく、大切な時間になるような気がしました。

1週間後、やはり流産しました。けれど、私の心は落ち着いていました。小さな命が、今の私に足りない心を懸命に教えてくれたことが、本当にありがたくて、神様が下さった四つ目の命との出愛に心から感謝しました。

ふしを頂いて

小さな命が教えてくれたことは、これだけではありませんでした。それから1カ月がたち、流産の原因となった病理検査の結果が出ました。その結果は耳を疑うものでした。聞いたこともない病名、胞状奇胎(ほうじょうきたい)。500人に1人の確率と言われる異常妊娠でした。

問題なのは胞状奇胎の約20%は、がんに発展する可能性があること。赤ちゃんを生み出す生命力の源である場所にがんが発症すると、身体全体に広がる可能性があるとも言われています。

「これからは月に1度の血液検査で、数値が上がっていないか経過観察します。数値が高くなれば、抗がん剤治療です」。今まで健康そのもの。病気には縁のなかった私には信じ難い、現実とは思えない突然の診断でした。

病院のロビーに一人ぼーっと座りながら、ふとこれからのことを考えました。がんの可能性……主人には何て言おうか。心配するだろうな。まだ幼い子どもたちのかわいらしい顔が浮かびました。

「死」なんて、自分にはまだまだ遠い先のことだと思っていたものが、急に避けられないほど近づいているようにも思えました。

ついにきたな。これがふしなんだ。神様が私の心を立て替えるために、懸命に「これでもか、これでもか」と教えてくださっている。

ここまでして変われない私。なんて情けないんだろう。なんて自分に甘いんだろう。なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになっていきました。

(ページ「3」へ続く)

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