第3回 親神天理王命

もくじ

神様はどこに居られる?

世界には、さまざまな宗教があります。
そして、さまざまなものを礼拝の対象にして拝んでいます。
石や木から彫り出した像や絵に描いたもの、あるいは紙でできたものを神や仏と見立てて拝むものもあれば、海や山や大木や岩を崇拝する信仰もあります。

では、私たちの天理教は、何を神として、何を拝んでいるのでしょうか。

このことは、信仰の基本となる大切な事柄ですので、ちょっと難しい話になりますが、少しお話をさせていただきたいと思います。

さて、本当の神様は、この世のどこにおられるのか。

そのことについて、おやさまは、

神と言うて、どこに神が居ると思うやろ。この身の内離れて神はなし

『稿本天理教教祖伝逸話篇』 164 可愛い一杯

とお教えになられています。

また、これに似た話として、これまで人間に拝ましてきたものはどれもこれも皆、紙や金や木を使って作ったものばかりであったが、実は、紙や金や木で作ったものの中には神が入り込むことができないのである。
だが、人間の身体には神が入り込んでどんな守護もしているのであるから人間に勝る神はない、ということを聞かせていただきます。

人間に勝る神はないとは、これは皆さん自身が神様であるという意味ではありません。

人間を生かしている身体の中の生命の働き、それこそが拝むべき神の姿だということを言われているのです。

十全の御守護

このことをよくわからせるために親神様は、おやさまを通してこの世と人間の元初まりの真実を明かされるとともに、人間を創造し、今においても人体とこの世の森羅万象を支配されている親神様の守護を示され、それぞれに神名をつけて「十全の守護」としてわかりやすくお教えくださいました。

一、くにとこたちのみこと

月様で天、お姿は頭一つ尾一筋の大龍。人体の目と潤い、世界の水の守護。
人体の約60パーセントは水だということを考えると、潤いは生命維持の最も大切な条件であることがわかります。

二、をもたりのみこと

日様で地、お姿は頭十二尾三筋で尾の先にそれぞれ剣のある大蛇。
十二の頭は十二支の方に取り巻いて十二時、十二カ月の時間を支配している。人体の温み、世界の火の守護。体温が下がり身体が冷たくなれば、それは死を意味します。温みは生命維持の最も大切な条件の一つです。

『天理教教典』に、

この世の元の神・実の神は、月日親神であって、月様を、くにとこたちのみこと日様を、をもたりのみことと称える。あとなるは皆、雛型であり、道具である。

30ページ

と述べられていますように、この世はこの月日親神様の身体であり、陰陽、火水などの二つ一つ、天地抱き合わせの守護によってこの世のすべてを支配されています。

そして、以下の八柱の神名は、月日親神様が人間とこの世界を創るために使われた道具雛型であります。

三、くにさづちのみこと

女一の道具、皮つなぎ、世界の万つなぎの守護。
一の道具とは、生殖器のことです。
人体は、約60兆個の細胞から成っていると聞きますが、細胞をつなぎ、皮や肉を成すのはこの働きがあってこそです。
金銭や人の縁をつないでくださるのもこの守護です。

四、月よみのみこと

男一の道具、骨つっぱり、世界の万つっぱりの守護。
つっぱりとは、硬く硬直する意味でつっぱりがなければ人も物も立つことができません。

五、くもよみのみこと

人体の飲み食い出入りの働き、また世界の水気上げ下げの守護。
食物が器官を通り、不要なものを排泄し、栄養を摂取した血液が隅々まで巡ることで生命が維持されています。

六、かしこねのみこと

息吹き分けの働き、風の守護。
呼吸は生命維持の必須条件であり、また人は口から風を出すことで言葉を発することができます。

以上、六つが私たちの身体を成り立たせている守護で、これを「身の内六台」とお教えいただきます。

七、たいしよく天のみこと

出産の時に母と子の胎縁を切り、出直しの時に息を引き取る世話。
世界の切ることいっさいの守護。
人の生き死に、悪縁や悪運を切ってくださるのもこの守護です。

八、をふとのべのみこと

出産の時に母胎から子を引き出す働きで、世界の引き出すこといっさいの守護。
農作物が大地から生えてくるのもこの守護で、食物の恵みをもたらす大切な働きです。

九、いざなぎのみこと

男性の雛型・種となった元の父親。

十、いざなみのみこと

女性の雛型・苗代となった元の母親。

人間創造の時、このいざなぎのみことの体内に、月よみのみことの男一の道具を仕込んで、月様が入り込み。
いざなみのみことの体内にくにさづちのみことの女一の道具を仕込んで、日様が入り込み、人間創造の守護を教え、母親なるいざなみのみことの体内に子を宿し込んで、最初の人間が産みおろされました。
この宿し込みの場所が、今おぢばのかんろだいが据えられている地点です。

以上、この十全の守護によってこの世の摂理は保たれ、人体は生命の営みを続けていられるのです。
すべては親神様の守護があっての賜物で、私たちの身体も自分の物ではなくて親神様からの借り物であります。

天理王命(てんりおうのみこと)

そして、天理王命とは、この十柱の神名の総名であると聞かせていただきます。

天理王命の神名を唱えることは、十柱の神名を併せ念じることで、我が身とこの世に溢れる十全の守護の一つひとつを拝する意味があると思わせていただきます。

また、おやさまの高弟の先生が残したお話では、この十全の守護によって人間が創られた証拠に、人間には十本の指をつけておいたのだとも聞かせていただきます。
両親指は、月日様、両小指は、いざなぎのみこと、いざなみのみこと、あと六本は道具をあらわしていると聞かせていただきます。

合掌は、世界共通の神を拝む自然な姿勢ですが、これは、十全の守護によって自分の体内に息づく生命の働き一つひとつを、またこの世に現わされる天地自然の恵みの一つひとつを拝んでいるのと同じ意味があるのだと悟らせていただけます。

では、その拝むべき天理王命は、今、どこにいらっしゃるかということですが、親神様は、その神名を人間や像や物にではなく、未来永劫変わることのない人間創造の地点・ぢばに授けられましたので、ぢばにお鎮まりくださいます。

ぢばは、月日親神様が人間を宿し込まれた地点で、生命の原点であり人類共通のふるさとでありますから私たちはぢばを拝し、天理王命の神名をとなえることで、自分がこの世に生を享けて、今に生かさせていただいてるご恩に報わせていただくのです。

つづく

※『Happist』2009年8月号掲載

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